本格化する広域化＆ハイブリッド化、そしてカーボンニュートラル化

データセンタービジネスは、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻を契機にして、劇的な変化・進化を遂げつつあるようです。この変化・進化は、コロナ禍以前から潜在的には進行していたが、急加速しているのが現状ではないでしょうか。デジタル田園都市構想の中では、データセンターの地方拠点の整備が打ち出され、まず、北海道と九州の拠点を形成し、面としての日本のデータセンター環境を整備し、海底ケーブルの新設による新しいグローバルなデータセンターネットワークが誕生しようとしています。一方、ハイパースケールによる大規模クラウドへの収束の傾向は、変化をみせつつあるようです。これには、本格的な人工知能の実現が ChatGPTに代表される大規模言語モデルの急激な進展が深く関係しており、ハイブリッドクラウド、エッジクラウドの展開が急激に検討されているようです。これまでのコロケーションを基本としたデータセンターサービスは、クラウド化と人工知能のようなHPC(High Performance Computing)を実現する新世代のサーバープラットフォームと従来型のプラットフォームの共存と棲み分けが検討されています。さらに、サーバーの発熱密度・電力密度が20-30kVAを超える状況が急激に進行しつつあり、水冷により熱対策が本格導入される方向にあります。 このような状況に、カーボン・ニュートラルという社会的要請が強化されています。グリーンデータセンターに対する社会的要求であり、これに データセンター業界は回答を準備する必要があります。 本フォーラムが、2023年のデータセンター業界を鳥瞰し、2024年への新しい展開を議論する機会になることを期待しています。

「データセンター・イノベーション・フォーラム」プログラム委員長
東京大学 大学院
情報理工学系研究科
教授
日本データセンター協会
副理事長 兼 運営委員長

江崎 浩